建築デザイン論1/4 レポート

やったで!

 

建築デザイン論 第1課題 

伝統的建築における気候風土や地域環境(主として温熱環境) と建築形態の密接な関係性を示す例を2例取り上げ、 図と文章でレポートしてください。 教科書掲載例を引用してレポートすることは可としますが、 教科書掲載例は1例に限るものとし、 他の例は教科書掲載例以外とすること。また、 引用例についても教科書よりより詳細な資料と解説を加えることを 条件とします。(1400字以上)

取り上げたのはカナートとオンドル。オンドルはなんでかしらん資料が少なかった。ローマ帝国のセントラルヒーティングにするのもアリやったと思う。カナートは熱い。岡崎氏の本入手しようかと考え中。

なにはともあれ、元日に早速1本作って提出したのはとても良かったな!

 

No.1 カナート(イラン)

 

 一つ目の例は、乾燥地域での暮らしを潤す地下水路「カナート」 を取り上げる。

アッカド語で葦を意味するkanuを語源とするこの語は英語のc analの語源となったとも言われる。 ササン朝ペルシアでは水路と噴水によって4つに区画する庭園様式 が発展し、 常に水が流れ花が咲く別天地を砂漠の過酷な熱気の中に作りあげた 。この庭園はペルシア語でparadidaと呼ばれ、 一説によるとparadiseの語源となったとされる。

 さて、その構造だ。 町に向けてなだらかに降りる丘陵はその地下にほぼ同じ形の沖積帯 を有し、そしてその上を地下水が滑り降りている。 これが地下水脈の流れだ。ある地点から等間隔に竪穴を掘る。 その竪穴をつなぐように農地・ 居住地の方面へ向けてなだらかに下る横穴を掘る。 竪穴の壁肌へ浸みだした地下水は横穴を通って地表へと湧き出す。 こうして作られた水路が人々の暮らしを直接に潤している。

 畑ではナツメヤシやザクロを育て、建物の中を流れる水路の水は同 じくペルシア地方に広く見られるバードギール(採風塔) の送り込む風とともに、砂漠の乾燥した熱気から内部空間を守り、 室内を涼しく保つ。

 カナートは水が低いところへ流れるという性質、 あるいは自然の摂理をそのまま利用しているためにきわめて効率が よく、また一度作ればメンテナンス以外に追加の投資がいらない。 カレーズ・ ファラジ等と呼び名を変えながら乾燥地帯に広く伝わった。

 上の説明では簡単に書いたが、数十メートルの竪穴を掘り、 地下水とともに横穴を掘り進め、 正確に水平より少し低い方向へと掘り進め、 その水路壁を保持する技術は並大抵のものではない。 科学や数学で世界をリードしたペルシアの非常に高い技術力がここ に表れている。

 また完成したカナートが追加のエネルギーを必要としない様子は、 まるで自然環境に存在する小川のようにも見える。 ここにはペルシアの深い知恵が感じられる。

 ペルシアに30000以上あるカナートのうち、 11件が2016年に世界遺産に登録された。 地下水路カナートを含めたペルシアの水利文化は、 持続可能な共生技術を考える上で常に参照する必要があるだろう。

(856文字)

 

 

参考文献・資料

1)‌ 山田耕治、「土木遺産の香り カナート発祥の地の環境共生技術 イラン・ヤズド」、Consultant VOL.263、2014年4月号

2) 福原隆一、 Abudallah Al-Ghafri 「伝統的水利システム・ カナートに見る持続可能な資源利用のヒント」ARDEC world agriculture now No.59、2018年12月号

3) 岡崎正孝「カナート イランの地下水路」2000年、論創社

 

 

No.2 オンドル(韓国)

 

 冬の寒さに対する建築の工夫として、韓国・中国・ ロシアでは煮炊きの火の熱を構造内部へと通して暖房熱源とする手 法が広く見られる。韓国ではオンドル(温突)、中国ではkang (炕)、ロシアではペチカ (печка )と呼ばれ、 かまどの熱を煙道で運ぶ点は共通しているが、 それぞれに独自の発展をしている。ここではその内、 韓国のオンドルについて取り上げ、レポートしたい。

 韓国の北部に位置するソウルでは、1月の平均最低気温が-2. 4℃となり、大阪での2.8℃と比較して5.2℃低い。 この寒さをしのぐための暖房機構が伝統的にオンドルと呼ばれてい る。

 煮炊きするためのかまどの後ろに煙坑として溝を掘る。 その溝を覆うように平石を据え、粘土で固定する。 その上にザラ紙等を貼り、仕上げに壮版紙(チャンパンジ)と 呼ばれる油紙を貼る。

 かまどで薪を燃やし、煮炊きをする。 その熱が煙坑を通って平石を暖める。その結果、 床面から室内が暖められる。平石や粘土は熱容量が非常に大きく、 夕方に薪を燃焼すれば、蓄えられた熱が夜のあいだ床を暖める。 底面全体を暖めることで、 非常に快適に過ごすことができるという。

 現代日本の住宅の多くでは、 調理の廃熱はその真上にある換気扇で外へ運ばれ捨てられている。 エアコンを使いつつ、換気扇を使っている現状を考えると、 オンドルの蓄熱方式は合理的であり学ぶ点は多い。

(556文字)

 

 

 

 

参考文献・資料

1) 1981年から2010年の平均最低気温、大韓民国気象庁

2) 1981年から2010年の平均最低気温、気象庁

3)  阿久津栄将「CFD に基づく韓国の伝統的住居の温熱環境 -夏季と冬季の快適性評価」 法政大学大学院デザイン工学研究科紀要 Vol.1、2012年3月